令和7年度施政方針
最終更新日:2025年2月12日
施政方針とは、市政運営にあたり、市長の市政運営に対する基本的な考え方や予算案及び主要な施策について述べたものです。
令和7年度施政方針(令和7年2月12日)
本日ここに、令和7年第1回富士見市議会定例会が開催され、令和7年度一般会計予算をはじめ、市政の関連議案についてご審議をお願いするにあたり、私の市政に対する基本方針と施策の概要を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。
1 はじめに
昨年を振り返りますと、元日に発生した能登半島地震という衝撃的なニュースから始まりましたが、明るい話題も多かったと感じております。陸上女子やり投げで北口 榛花選手が金メダルに輝くなど、日本選手団によるパリ五輪での活躍や、肘の手術など様々な苦境を乗り越え、アメリカ大リーグにおける54本塁打、59盗塁というメジャー史上初となる「50-50」を達成した大谷 翔平選手の活躍、広島・長崎における被爆体験の伝承などを通じて、核兵器の廃絶を訴え続けてきた、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞など、喜ばしい出来事が多くございました。
日本経済を見ますと、日本銀行による「マイナス金利」の解除に伴う、いわゆる「金利のある世界」への転換や、東京株式市場の日経平均株価が、バブル経済期の最高値を約34年ぶりに更新したこと、また、デザインを一新した新紙幣が約20年ぶりに発行されるなど、新たな動きや変化が出てきました。一方で、米の品薄が本格化したことによる「令和の米騒動」や、円安による食料品やエネルギー価格の上昇など、私たちの日常生活への影響も続いた1年であったと感じております。
政治の世界においても、アメリカ大統領選挙において、共和党候補のドナルド・トランプ前大統領の再選や、衆議院議員総選挙により、15年ぶりに与党が過半数割れとなるなど、大きな変化がございました。所得税控除額の引き上げである「103万円の壁」や年金改革など、地方自治体を預かる首長として、市民生活や地方自治体の運営に大きく影響するものであり、国においての議論を注視しております。
一方、本市の昨年を振り返ってみますと、「みんなが活躍できる価値共創型都市~充実した日々の実現に向けて~」を提案し、内閣府からSDGs未来都市に選定され、行政と市民、企業など多くのステークホルダーとの連携強化、自律的取組の共創、持続可能なまちづくりを目指すプラットフォームとして「フジミライテラス」を創設し、その第一歩を歩み始めました。
昨年は、観測史上最も暑い年であったと気象庁から発表がございました。近年、地球温暖化による問題が深刻化する中、本市は「ゼロカーボンシティ宣言」を表明した基礎自治体として、地球温暖化対策に取り組むため、埼玉県ときがわ町と「森林整備に関する協定」を締結いたしました。
また、本市の歴史的資源の一つである水子貝塚公園におきましては、開園30周年を迎え、記念事業として「縄文フェスタ」を開催し、市内外から多くの方々にご来場いただき、富士見ふるさと祭りとともに、皆様の笑顔に触れることができました。
市役所新庁舎整備につきましては、公募型プロポーザルを採用し、公開プレゼンテーション・ヒアリングを経て、基本設計・実施設計の事業者を決定することができ、親しまれる新庁舎建設に向けて着実に進んでおります。
昨年も、様々な施策に取り組んでまいりましたが、いよいよ本年は、第6次基本構想・第1期基本計画の総仕上げの年となります。これまでの行政評価などを踏まえ、第1期基本計画で立てた目標に到達できるよう取り組んでいくと同時に、第1期基本計画を検証し新たな課題を整理しながら、私の政策方針である「ふじみ☆ビジョン30+ 3rd Step」を踏まえ、第6次基本構想・第2期基本計画へとつなげてまいります。
2 令和7年度の市政運営の方針
平成27年4月にオープンしたららぽーと富士見は、本年に開業してから10周年を迎えます。この間、本市も市外へ出かけるまちから、市内へ迎えるまちへと変わっていくため、シティプロモーション活動に力を入れてまいりました。その効果もあり、富士見市へ訪れる方も増え、変化がもたらされております。今後におきましても、富士見上南畑地区産業団地整備事業や、水谷柳瀬川ゾーンにおける土地利用を推進することで、さらなる市の活性化を図ってまいります。
今年の干支は、巳年でございますが、蛇は古代から皮を脱ぎ捨て、新たに生まれ変わる姿が、再生や永遠の象徴とされています。孫子の兵法の中に「常山蛇勢」という言葉がございます。この言葉は、組織のトップから末端まで連動して動き、隙のないことを意味しております。巳年になぞらえ、新たな挑戦や変化に対して、市職員一丸となって取り組み、第6次基本構想で定めた20年後の理想の未来である“充実した日々”を創り上げていくため、次の3つの方針をもって令和7年度の市政運営を行ってまいります。
(1) 改革・改善の継続
市民の期待に応え、より良い市民サービスの提供や効率的な行政運営ができるよう、前例踏襲や現状維持に甘んじず、常に改革・改善の視点を持って業務にあたるよう、職員に対し機会あるごとに話しております。
少子高齢化の進展や人口減少など、社会情勢の変化に対応し、安定した市政運営をしていくためには、財政規律の維持・向上に努め、健全な財政運営を推進することや、施設の統合や廃止など、公共施設の質と量の最適化を行う公共施設マネジメントの推進、ICTを積極的に活用したスマート自治体への転換など、行財政改革を進めていくことが必要となっております。特に、本年はシステムの標準化・共通化が完了いたしますが、これまでの行政サービスの在り方を見直し、市民サービスの向上や行政事務の効率化を、さらに進めていかなければならないと考えております。
常に変化する社会情勢や市民ニーズをしっかりと捉えるとともに、将来を見据えながら、改革・改善の視点を持って市政運営を推進してまいります。
(2)日常の市民生活に寄り添う
私はこれまで事業を推進するにあたって、目の前の問題解決と長期的なまちづくりの2つの視点を持ち、市民の皆様の声を丁寧に聴きながら、市民に寄り添った事業を展開してまいりました。通学路の点検結果による道路改善や、市内全18校の体育館における空調設備の設置、洪水対策としての計画的なポンプの更新、こども医療費の支給対象年齢を15歳から18歳まで拡充、市内全域で活動が広がったふじみパワーアップ体操をはじめとした介護予防など、子どもから高齢者まで、市民生活に密接に関わる事業に力を注いでまいりました。
これからも常に市民目線に立った寄り添う取組を進めていくために、私は職員と一緒に汗をかきながら、時には現場に赴き、そこでいただいた声を大切にし、市政運営を推進してまいります。
(3)知恵と工夫による施策の推進
本市は、シティプロモーションをはじめとした様々な施策の取組により、人口は微増しており、税収も増加しています。一方、市民サービスの拠点である新庁舎整備など、多額の費用を要する大型プロジェクトを着実に進める必要があり、今後の行財政運営はより厳しい状況になっていくことが見込まれています。
そのような中においても、社会情勢の変化や市民等のニーズに対応するため、新たな施策を展開していくには、多くの方の知恵を拝借し、様々な工夫を凝らして、取り組んでいく必要がございます。
昨年、産官学民によるフレイル予防連携プロジェクトとして、包括連携協定を締結している日本薬科大学、市内事業者であるパルカフェ、フレイルサポーターや食生活改善推進員などにより、フレイル予防のメニュー開発に取り組んでいただきました。参加した方の様々な知見と、ワークショップを取り入れるなどの工夫を重ね、メニュー開発を行ったと聞いております。
多様化、複雑化する課題がこれまで以上に増えていくことが想定されますが、多くのステークホルダーの知恵をお借りするとともに、より効果的な事業とするため創意工夫を凝らして、困難な状況においても課題解決できるよう取り組んでまいります。
3 施策の概要
只今申し上げました基本方針に基づいた主な取組を、第6次基本構想・第1期基本計画で定めます分野に沿って、ご説明申し上げます。
(1) 子ども・子育て支援、学校教育
はじめに、分野1から分野3のうち、子ども・子育て支援及び学校教育について、ご説明いたします。
各部署のこどもに関する取り組みを集約した、こども施策の総合計画となる「富士見市こども計画」をスタートさせ、これまで以上に総合的かつ一体的にこども施策を進めてまいります。
医療的ケア児を介護する家族等のリフレッシュを目的とした訪問型レスパイト事業について、短時間での利用や年間利用時間など、拡充したサービスを継続することで、引き続き、家族等の身体的及び精神的な負担軽減を図ってまいります。
放課後児童クラブにつきましては、針ケ谷第1放課後児童クラブの大規模改修工事を実施するとともに、諏訪第2放課後児童クラブ及び関沢第2放課後児童クラブにおいて空調機の更新工事を実施し、児童が安全で快適に利用できるよう整備してまいります。
GIGAスクール構想を通じて整備した小・中学校の児童生徒用端末を更新します。また、市内小・中・特別支援学校のネットワーク環境の更新を行い、誰一人取り残すことのない、個別最適化された学びを深めることができるよう、ICT環境の向上を図ってまいります。
児童生徒一人ひとりが主体的に学習に取り組み、深い学びを実現する環境を整備するため、学校図書館の蔵書を昨年度に引き続き充実いたします。
学校施設につきましては、特別支援学校における児童生徒の増加に伴い、普通教室を増やす改修工事を実施いたします。水谷小学校と東中学校につきましては、屋内運動場の改修工事を実施するとともに、勝瀬中学校と水谷中学校では校舎の長寿命化工事に取り組み、児童生徒が安全で快適に学校生活を送ることができるよう、教育環境を整備してまいります。学校給食センターにつきましては、排水処理施設の修繕と老朽化したボイラーの蒸気管を更新する工事を実施するなど、施設の適切な維持管理に努めてまいります。
また、物価高騰により学校給食で使用する食材費が高騰しておりますが、市内小・中・特別支援学校に在籍する児童生徒の保護者における経済的負担を軽減するため、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、食材価格の高騰分を支援することで、栄養バランスの取れた安心・安全な学校給食を提供してまいります。
(2) 地域福祉、高齢者福祉、障がい福祉、健康づくり
次に、分野4から分野7のうち、地域福祉、高齢者福祉、障がい福祉及び健康づくりについて、ご説明いたします。
複雑化・複合化している福祉課題に対応するため、行政及び民間支援機関並びに、地域住民との協働による、包括的な支援体制を構築する重層的支援体制の整備を継続し、支援が必要な方に対し社会とのつながりを回復させる、参加支援事業などに取り組んでまいります。
これまで、産官学民によるフレイル予防メニューの開発やフレイルサポーターによるフレイルチェック事業、コンピューターゲームをスポーツ競技として捉える、eスポーツによるフレイル予防など、地域と一体になって取り組んでまいりました。今後も多様なステークホルダーと連携を図りながら、3つの柱である「栄養」、「運動」、「社会参加」を意識したフレイル予防に取り組んでまいります。
障がいのある方が、通所事業終了後に過ごす場を確保するため、日中一時支援事業について、夕方支援のメニューに対する補助を拡充した制度を継続し、障がいのある人やその家族が、安心して地域で生活できる環境を確保してまいります。
手話言語の普及啓発と障がい者の文化芸術活動を推進するため、誰もが楽しめる手話狂言ワークショップを、市内の小・中学校で引き続き実施してまいります。
高齢者の方などに対する帯状疱疹ワクチンの定期接種化へ対応するため、対象者への周知など、スムーズに事業開始ができるよう取り組んでまいります。
(3) スポーツ、文化芸術・文化財、生涯学習
次に、分野8から分野15のうち、スポーツ、文化芸術・文化財、生涯学習について、ご説明いたします。
夏季における市内小学校のプール開放につきましては、未就学児の利用も可能となるようサービスを拡充し、子どもたちを中心とした、スポーツ及びレクリエーション活動の場を確保してまいります。
本市は、「手話は言語である」との考えのもと、「富士見市手話言語条例」を制定しており、私が全国手話言語市区長会の事務局長を務めているご縁もあり、国内初開催で100周年の記念大会となる東京2025デフリンピック大会について、セルビア共和国選手団の事前キャンプの実施など、大会開催に向けた支援を行い、障がい者スポーツの普及啓発と理解をさらに促進させ、インクルーシブ社会の実現を目指してまいります。
文化芸術の発信拠点である、市民文化会館キラリ☆ふじみにつきましては、誰もが安全で安心して利用できる、快適な活動環境を提供するため、大規模改修工事を実施いたします。工事実施期間中においても、アウトリーチ事業を中心に、市民の方々が文化芸術に触れられる機会を創出してまいります。
個人所有・管理の市指定文化財を保存するため、難波田城跡土塁を購入し、適切に保全を図ることで、歴史資源、文化資源を後世に引き継いでまいります。国指定史跡「水子貝塚」につきましては、適切な状態で保存管理し後世に残していくと同時に、観光資源や地域資源としての魅力度向上が図れるよう、保存活用計画や整備基本計画に沿って、基本設計と発掘調査の整理及び分析を進めてまいります。
鶴瀬西交流センターにつきましては、安全で快適に利用できるようにするため、大規模改修工事を実施いたします。また、鶴瀬公民館におきましても、外壁改修工事を実施し、公共施設の適切な維持管理に努めてまいります。
(4) 土地利用、道路、治水、水道、下水道
次に分野16から分野21のうち、土地利用、道路、治水、水道及び下水道について、ご説明いたします。
行政・文化・産業の中心であるシティゾーンにおける富士見上南畑地区産業団地につきましては、雇用の創出や市税収入の増加など、地域の発展につなげるため、進出企業と調整を図るとともに、引き続き、埼玉県と連携を図りながら、周辺整備を進めてまいります。
水谷柳瀬川ゾーンにつきましては、埼玉県による調節池の整備状況に合わせ、県をはじめ、関係団体と協議を重ねながら、豊かな自然環境など地域資源を活用した市民の憩いの場となる周辺整備や、地域の発展と活性化につながる魅力的なまちづくりのため、交通利便性を生かした土地利用について、引き続き検討をしてまいります。
市民の円滑な移動に資する幹線道路につきましては、みずほ台駅東通線の整備や、市境にある橋梁について、近隣市と連携を図りながら修繕工事に取り組んでまいります。生活道路につきましても、舗装整備や狭あい道路の解消に取り組み、地域における生活環境の向上を図ってまいります。
集中豪雨が増加傾向の中、台風などの大雨による浸水被害の防止・軽減を図るため、整備から40年以上経過する富士見江川について、護岸改修工事の詳細設計を実施いたします。また、水谷第一排水機場及び貝塚第二排水機場の施設更新工事を行うとともに、地域の状況に応じた浸水対策を計画的に進め、快適で安心・安全な生活環境を整備してまいります。
下水道施設につきましては、緊急輸送路等の直下に埋設される公共雨水管の耐震診断を行うとともに、気候変動に伴う集中豪雨や大型台風による内水被害に係るリスク情報を、市民が的確に取得できるよう内水ハザードマップの更新を行ってまいります。
国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、水道基本料金の免除を実施することで、物価高騰により影響を受けている市民や事業者を支援いたします。
(5) 環境、公園・緑、住環境
次に、分野22から分野24、環境、公園・緑及び住環境について、ご説明いたします。
2050年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロとすることを目指した、「富士見市ゼロカーボンシティ宣言」を実現していくために、森林環境整備基金を活用し、協定を締結した埼玉県ときがわ町の植林や草刈等の森林整備に参画して、カーボンオフセットによる脱炭素を推進いたします。また、伐採されたときがわ町産の木材を使用したベンチを購入し、この取組について周知を図ってまいります。
歴史的な古民家、山林、湧水などがそろった本市の魅力的な地域資源の一つである「大御庵の杜」につきましては、引き続き、市民の皆様と検討していくとともに、適切に古民家や山林等の維持管理を行ってまいります。また、貴重な自然環境の保全と活用の両立に向け、生物モニタリング調査を継続してまいります。
計画的に緑地の保全を進めていくため、市民が身近に親しめる憩いの場となる市民緑地「谷津の森」の用地を取得し、豊かな自然環境を後世に引き継いでまいります。
ご迷惑をおかけしております鶴瀬駅の西口土地区画整理事業につきましては、換地処分や町名地番変更などに向けて、着実に事業を進めてまいります。鶴瀬駅東口土地区画整理事業につきましては、都市基盤の整備に向け、駅前広場周辺道路などの公共施設整備や宅地整備を進め、富士見市の玄関口としてふさわしい良好な市街地を形成してまいります。
(6) 商工、農業
次に、分野25から分野27のうち、商工及び農業について、ご説明いたします。
市内で次代を担う若者や女性、シニア等を対象に、創業支援セミナーの内容を拡充することで、創業者の裾野を拡げるとともに、創業者支援のための補助メニューを創設し、創業にチャレンジしやすい環境を整えてまいります。
また、新規事業の立ち上げや事業承継など、経営のプロから相談を受けることができる経営・創業相談事業を継続するとともに、創業期から切れ目のないサポート環境を整備することで、市内事業者を支えてまいります。
経営革新計画や設備導入など、意欲あるチャレンジを行う事業者を支援する中小企業チャレンジ支援事業補助金を継続し、市内の消費拡大や地域経済の活性化を図ってまいります。
農業施策につきましては、ほ場整備事業完了地区やその他の優良農地の保全を図り、生産技術の向上と安定した経営基盤づくりを進め、担い手が安心して農業を継続できるようにするため、土地改良区の行う施設の維持管理に対して補助を行ってまいります。
(7) シティプロモーション
次に分野28シティプロモーションについて、ご説明いたします。
現在、人口はシティプロモーションの効果もあり微増が続いております。しかしながら、全国的な少子高齢化を背景に、本市においても将来的には人口減少が見込まれております。一人でも多くの方々に富士見市を知っていただき、興味・関心を呼び込むためW30のPRパンフレットを池袋駅や川越駅、有楽町の交通会館内にある埼玉県のふるさと回帰支援センターなど市外で配布し、交流人口や関係人口を創出してまいります。
また、「住み続けたい」と思っていただける市民を増やすため、シティプロモーション戦略アドバイザー会議を継続し、推進体制の充実を図っていくとともに、職員一人ひとりが市のセールスマンになることができるよう、次代を担う職員を対象としたシティプロモーション研修を継続するなど、アウタープロモーションとインナープロモーションのバランスを取りながら、取組を推進してまいります。
(8) 危機管理、総合行政
最後に、分野29危機管理及び分野30総合行政について、ご説明いたします。
今年は、阪神淡路大震災の発生から30年の節目の年であり、神戸市長田区での大規模火災は忘れられない出来事でございます。改めて地震火災の恐ろしさを認識するとともに、被害を軽減する取組が必要と考え、本市の木造住宅密集市街地における「燃えないまちづくり」について、検討を進めてまいります。
また、庁舎の災害対策本部機能の補完や備蓄品の集中管理、支援物資集積場所、ボランティアセンターの機能を有する、中央防災センターの整備につきましては、地質調査と実施設計を行い、令和9年度の供用開始に向け進めてまいります。
「誰一人取り残さない」を理念にすべての人に配慮するインクルーシブ防災の取組として、福祉避難所開設訓練を継続し、福祉関係者や要配慮者を支援する方の防災力向上に取り組んでまいります。
市役所新庁舎整備につきましては、災害に強く市民の安全・安心を確保し、だれにでもわかりやすく利用しやすい庁舎を目指し、建設基本設計やネットワーク基本設計を実施してまいります。
「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」にもとづき、住民基本台帳や住民税などの基幹系情報システムについて、標準準拠システムへの移行を完了いたします。それに伴い、収納チャネルの拡充として、後期高齢者医療保険料や介護保険料をコンビニエンスストアで支払いができるよう取り組みを進めてまいります。
また、国民健康保険税や住民税普通徴収につきましては、eLTAXによりスマートフォンなどからオンライン決済できるシステムを導入するなど、市民の利便性と行政手続きの効率化を図るとともに、今後においても市民目線に立った市民サービス向上を目指して、本市のデジタルトランスフォーメーションをさらに加速させてまいります。
4 令和7年度予算の概要
令和7年度は、令和3年度からスタートした第6次基本構想・第1期基本計画の達成状況の評価年度となります。本計画の総決算として、11万人超の市民が「充実した日々」を送ることができる「理想の未来」の実現に向けて予算を編成いたしました。
予算の総額は、436億674万3千円で、前年度比29億4,311万9千円の増、率にして7.2%の増となり、過去最大の規模となっております。
市税につきましては、納税義務者の増加などにより、総額172億2,357万5千円で、前年度比7億5,066万5千円の増、率にして4.6%の増となっております。
地方交付税につきましては、地方財政計画等を踏まえ、前年度より4億円の増となる45億3千万円を見込む一方、臨時財政対策債につきましては、ゼロといたしました。
地方消費税交付金につきましては、地方財政計画や交付実績を踏まえ、前年度と同額となる25億円を見込みました。
市債につきましては、谷津の森用地取得事業の皆増などに伴い、前年度比4億2,670万円の増、率にして27.4%増の19億8,570万円となっております。
なお、繰入金につきましては、財政調整基金などから16億6,149万5千円の繰り入れを行っております。
5 結びに
元号は、昭和・平成・令和と移り変わり、今年は令和7年「昭和100年」という節目の年にあたります。「降る雪や 明治は遠く なりにけり」この句は昭和6年、大学生だった中村 草田男が詠んだものです。明治という時代は過ぎ去り、明治、大正、昭和と時代が進み、活気にあふれた昭和の日本から明治をふり返り、時代が遠くなってしまったことの寂しさを詠んだ句と言われています。
私は昭和32年に生を受けて、平成、令和と生き、今年で68歳を迎えます。この作者である草田男のように、昭和が遠く感じるという感覚ではありません。むしろ、私には今も昭和の息遣いが聞こえるようでなりません。そこで、昭和の由来について調べてみました。「百姓昭明・協和萬邦」、この言葉は、「国民の平和と世界各国の共存と繁栄を願う」とあります。そして、時代背景などから、昭和という元号に込められた大きな期待と強い願いを感じます。
幕末から明治維新へと、極東の小国が坂の上の雲を目指し、近代国家への歩みを突き進んできた時代の明治。民主主義、自由主義を求める運動の「大正デモクラシー」と「第一次世界大戦」、「関東大震災」の発生など、15年と短いながらも激動の時代であった大正。昭和は、未曽有の激動と変革、苦難と復興の時代でした。私は、さらに続く平成、令和までを昭和100年と位置付けたいと考えております。
昭和の歴史をふり返りますと、アメリカの株価大暴落をきっかけに世界恐慌になり、その影響が日本へもおよび、昭和恐慌となりました。その後、日本は国民の平和と世界各国の共存と繁栄を目指しておりましたが、スタートで進路を誤り、1937年の日中戦争に始まり、1941年に太平洋戦争へと突入し、壊滅的な打撃を受け、ポツダム宣言を受諾、敗戦を迎えます。そして、二度と戦争の惨禍をくり返さないという不戦の誓いを立て、戦後の復興へと邁進します。
1955年から1973年まで、実質経済成長率は年平均10%前後で推移していきます。その後も1971年ニクソン・ショック、1973年石油危機とありましたが、重厚長大から軽薄短小へと時代に合わせて、その技術力の高さを世界に示します。1985年プラザ合意、1987年ブラックマンデーなど、世界経済とともに浮き沈みを繰り返しながら、さらに成長していきました。「ジャパン アズ ナンバーワン―アメリカへの教訓―」は、社会学者であるエズラ・ヴォーゲルの著作で日本経済を高く評価し、日本特有の経済・社会制度を再評価するきっかけとなり、1980年代からの安定成長期、そしてバブル崩壊までを象徴的に表す言葉として、しばしば用いられます。
その後、日本経済はいわゆる「失われた30年」と言われ、バブル経済崩壊後の後遺症により停滞を余儀なくされます。政治の世界においては、政治改革、政権交代など大きな変化をしていきました。国家財政においても問題が山積し、経済成長と財政健全化については、これからも大きな課題となっています。
また、地方自治体においては、地方分権の推進と地方財政の基盤強化に向けて、1999年から平成の大合併が行われましたが、本市はこの機会を成就することができませんでした。
2000年以降も度重なるショックが襲います。2001年アメリカ同時多発テロ、2008年リーマンショック、2011年東日本大震災、2020年新型コロナウィルスの蔓延が記憶に新しいところです。そして、現在は、少子高齢化の進展、地球規模の気候変動やこれに伴う自然災害の激甚化など、今日的リスクを多く抱えています。また、これまでの成功手法や仕掛けが成長の足かせになっており、規制改革、働き方改革、DX改革、女性活躍推進や多様性の尊重など、多くの改革を推進することが求められています。
昭和の息遣いは先人たちからの、今日の令和を生きる日本人へのエールであり、「昭和は生きている」との警鐘であると感じております。困難な時代を生き抜き、成長を果たしてきた「昭和100年」の歴史は、経験や知恵に学び、我々の持ち得る力を発揮し結束することで、豊かな日本を創造し続けることができ、未知なる課題への挑戦と、その解決を導く勇気を与えてくれるエールとなるものです。本市の理想の未来「充実した日々」は、実りある暮らし、充たされたつながり、恵まれた生活環境が、成長の継続をもって達成できると確信しています。
また、昭和100年の時代を全ての世代で共有し、この間の過ちやその反省を生かすことで、物事が大きく変わる分岐点や転換期において教訓とすることができます。「過ちては、改むるに、憚ること勿れ」と警鐘を鳴らされています。
最後に、改めて元号・昭和の意味である「国民の平和と世界各国の共存と繁栄を願う」、このテーマを「市民の安全と安心、共生社会の実現と成長の継続を願う」と読み替えて、理想の未来「充実した日々」の実現に向けて、私をはじめ職員一同とともに鋭意努力してまいります。
市民の皆様並びに議員各位におかれましては、なお一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げ、私の令和7年度施政方針といたします。
令和7年2月12日
富士見市長 星野 光弘
施政方針PDF版
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