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令和6年度施政方針

最終更新日:2024年2月20日

 施政方針とは、市政運営にあたり、市長の市政運営に対する基本的な考え方や予算案及び主要な施策について述べたものです。

令和6年度施政方針(令和6年2月20日)

 本日ここに、令和6年第1回富士見市議会定例会が開催され、令和6年度一般会計予算をはじめ、市政の関連議案についてご審議をお願いするにあたり、私の市政に対する基本方針と施策の概要を申し上げ、議員各位並びに市民の皆様のご理解とご協力を賜りたいと存じます。

1 はじめに

 元日から震度7を観測した能登半島地震は、家屋など建物の倒壊をはじめ、大規模な火災の発生、津波による家屋の破損など、甚大な被害をもたらしました。私はこのニュースを聞いた際、救助を待たれている方や家族の安否を確認できない方など、被災された方の不安な様子が思い浮かび、胸が締め付けられました。
 ここに改めて、お亡くなりになられた方に心からご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 翌日の2日には、幾重もの安全対策を施している我が国の航空システムにおいて、旅客機と被災地支援に向かう海上保安庁の航空機が衝突するという、信じられない事故も起きました。
 この2つの悲しい出来事を踏まえ、11万3千人の富士見市民の安全を担っている市長として、被災地への支援策の検討を指示するとともに、今後明らかになっていく事実をしっかりととらまえて、この出来事を教訓に富士見市での安全対策について、改めて見直しをするよう併せて指示をいたしました。
 さて、私も市長に就任してから7年半が過ぎました。平成の終わりには、多くの建物に甚大な被害をもたらした熊本地震や、学校のブロック塀による悲惨な事故が起きた大阪北部地震など、大きな災害が続きました。元号が平成から令和に変わり、新型コロナウイルス感染症による世界的なパンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、パレスチナのガザ地区における紛争など、様々な未曾有の出来事が起きました。
 富士見市におきましても、平成28年の台風9号や令和元年の台風19号による災害、新型コロナウイルス感染症による外出自粛やイベントの中止、日常生活に大きな影響のあった物価高騰など、多くの苦難に遭いました。私は、これらの出来事と正面から向き合い、迅速かつ的確な対応や支援に努め、市政運営の舵取りをしてまいりました。一方で、東京2020(にーぜろにーぜろ)オリンピック・パラリンピックへの取組や、市制施行50周年記念事業など、市民が一つになる契機とするため、全力で取り組んできたところです。
 私は市長就任1期目において、「誰もが住みたい、住み続けたい…選ばれるまち富士見市」の実現のために、私の政策提言である「ふじみ☆ビジョン21(ぷらす)」や第5次基本構想・後期基本計画を推進し、「賑わい・まちづくり」、「子育て・教育」、「健康長寿」の「希望の種」を蒔き、その種が芽を出しスクスクと成長し、実を結ばせてまいりました。
 さらに、2期目には、この成長の歩みを止めることなく継続させるため、「ふじみ☆ビジョン30(ぷらす)2nd(せかんど) Step(すてっぷ)」や第6次基本構想・第1期基本計画を策定するとともに、理想の“未来”に向けた道すじを示し、新庁舎などの整備に加え、思考力を磨くSTEM(すてむ)教育の全小学校での展開、手話の普及などの共生社会や富士見市ゼロカーボンシティ宣言に基づく脱炭素社会の実現など、持続可能なまちづくりに向け、富士見市の新たな将来像を描いてまいりました。
 今後におきましては、未来を創るための行動を起こしていくことで、市民の皆様に変化を実感していただけるフェーズに入ってくるものと考えております。
 少子高齢化やインフラの老朽化、社会保障費の増加、財政の硬直化など、地方自治体には多くの課題がございます。今後の市政運営をしていくうえで、社会情勢の変化が大きい今、行政だけで課題を解決することは、とても難しいことと感じております。市民や事業者、大学や金融関係の方など、様々な登場人物に参加していただき、先人から継承され、過去から現在に至ったこの手にあるバトンをつなぎ、富士見市の未来をともに創り上げるため、歩みを止めず進んでまいります。

2 令和6年度の市政運営の方針

 市内には、食のサーキュラーエコノミーに取り組んでいる、スタートアップ企業がございます。広報紙企画である「市長の事業者訪問」で会社にお伺いし、社長とも直接お話をさせていただきました。このご縁により、商工会を通じての市内飲食店や、市が包括協定を締結している女子栄養大学や日本薬科大学、学校給食センターなどが連携したプロジェクトを市内で進めることができました。
 私はこれまでも様々なご縁を大切にしながら、施策を打ってまいりました。年間分娩件数が全国トップクラスである恵愛病院との産後ケア事業の展開や、東京大学高齢社会総合研究機構とのフレイル予防事業の実施、また、この研究機構に企業として参加していた株式会社ロッテとの高齢者健康づくり事業、跡見学園女子大学とのスチューデントサポーター事業など、様々な方の知見や力をお借りすることで、市民の皆様により良いサービスを実現してまいりました。
 また、諏訪の森などの自然豊かな緑地や、水子貝塚・難波田城をはじめとした文化遺産についても、市民や事業者など多くの方とともに、それぞれが持つポテンシャルを活かしながら保存・活用に取り組んでまいりました。これらの取組により、この貴重な財産を後世に引き継いでいけるものと確信しております。
 今後におきましても、これまで以上に多くのステークホルダーに参画していただき、その多様性を尊重しながら、本市における新たな価値や魅力を創造することで、持続可能なまちを、そして、未来につながる富士見市をともに創り上げてまいります。
 本年の後半からは、第6次基本構想・第1期基本計画の検証を行い、第2期基本計画の策定をスタートさせてまいります。本年の干支は辰でございますが、龍の如く、力強く駆け上がり、鳳凰のように華麗に舞う、という意味の「(りゅう)(しょう)(ほう)()」という言葉になぞらえ、これまで芽吹かせたものを土台としてホップし、今このとき、しっかりと力強くステップを踏むことで、理想の“未来”に向け大きくジャンプができるよう、3つの方針をもって令和6年度の市政運営を行ってまいります。


(1)誰ひとり取り残さない共生社会の実現
 本市は、首都近郊という都市の強みを活かし、これまでベッドタウンとして、人口増加を活力に発展を続けてまいりました。今後におきましても、この「人」が、本市における大きな地域資源の一つであると考えております。
 日本全体での人口減少トレンドの中、本市もいずれ人口減少時代が到来することは避けられません。そのような時代において、この富士見市の未来を明るくしていくためには、一人ひとりがこれまで以上に輝き活躍していくことが求められます。
 そのためには、年齢、性別、障がいの有無に関わらず、誰もが活躍し、地域の中で生きいきと明るく豊かに暮らすことができる、全員参加型社会の形成が必要であると考えております。地域福祉の分野においても、これまで取り組んできた蓄積のうえに、新たな移動手段の確保や、フレイル予防事業の強化、デジタルデバイド対策など、様々な支援策を組み合わせながら、誰ひとり取り残さない共生社会の実現に向け取り組んでまいります。


(2)つながりや連携の強化
 コロナ禍において、社会全体で急速なデジタル化が進められたことにより、オンラインによる会合の普及など、人々のつながり方や連携の仕方にも大きな変化が生じております。このような変化に対応しながら、行政には、これまでのサービス提供主体としての役割に加え、地域をつなぎ新たな連携関係の構築を促す、プラットフォームビルダーの役割を担うことが必要と捉えております。
 少子高齢化により、地域社会の変容が大きくなることが予見される今だからこそ、新たな協力関係を構築し、人材、財源、スキルなど幅広い資源を共有しながら、今まで以上に市民ニーズへ柔軟に対応できる富士見市を創ってまいります。
 併せて、理想の“未来”に向け取り組んでいく際に、人材や財源など様々な資源の減少が見込まれます。そのため、多くの市民と心を一つにし、最短距離で成果を残していくことが必要となります。特に貴重な財産の一つである「豊かな自然」の継承は、先人から引き継がれた私たちの使命です。この使命を果たすため、私を旗印とし、ともに知恵を出し合い、力を結集しながら取り組んでまいります。


(3)未来への育み
 昨年の9月に開催した小学生ロボコン富士見市大会では、子どもたちの豊かな発想力と高い創造力に、無限の可能性を感じることができました。これまで取り組んできたSTEM教育の全小学校での展開を契機に、これらの能力をさらに伸ばしていけるよう取り組んでまいります。また、GIGAスクール構想における学習環境を整え、主体的に学び、自身の知識と経験をもとに自ら考え、課題解決に向かって努力していける、そのような人材育成につなげてまいります。
 一方で、これからの子どもたちは、生まれたときからデジタルの恩恵を受けている、デジタルネイティブ世代となります。そのため、対面でのコミュニケーションの大切さや、人とのつながりの重要性についても、肌で感じていただく機会の提供に努めてまいります。デジタルとアナログのバランスがとれた教育環境と、緑あふれる豊かな自然環境の中で、伸び伸びと大きく育つことができる富士見市を創ってまいります。

3 施策の概要

 只今申し上げました、基本方針に基づいた主な取組を、第6次基本構想・第1期基本計画で定めます分野に沿って、ご説明申し上げます。


(1)子ども・子育て支援、学校教育
 はじめに、分野1から分野3のうち、子ども・子育て支援及び学校教育について、ご説明いたします。
 医療的ケア児を介護する家族等のリフレッシュを目的とした、訪問型レスパイト事業について、短時間での利用や年間利用時間の拡大など、サービスを拡充し家族等の負担軽減を図ってまいります。
 公立保育所における使用済み紙おむつの回収や処分を開始し、保護者の負担軽減を図ってまいります。また、保育施設給付管理システムを導入し、市の審査事務の効率化と、民間保育施設における給付申請の負担軽減を図ってまいります。また、みずほ学園の遊具の更新工事や、みずほ台第1放課後児童クラブの大規模改修工事を実施し、園児や児童が施設を安全で快適に利用できるようにしてまいります。
 全ての妊産婦、子育て世帯、子どもに対して切れ目のない一体的な相談・支援を行うため、子ども未来応援センターに「こども家庭センター」を設置し、更なる支援の充実・強化を図ってまいります。
 子育て世帯の経済的負担を軽減するため、こども医療費の支給対象を通院・入院ともに18歳年度末まで拡大し、子育て支援の充実を図ってまいります。
 GIGAスクール構想を推進するため、特別支援学校における児童生徒用端末の更新を行うなど、継続的にICT環境の整備を行ってまいります。児童生徒が主体的に学習に取り組み、深い学びを実現できる環境を整備するため、学校図書館の蔵書を充実いたします。また、体力向上における課題である、敏捷性を向上させるため、授業や休み時間に利用可能なトレーニング教材を充実し、健やかな体の育成を図ってまいります。
 学校施設につきましては、令和4年度から実施している学校体育館への空調設備工事を進め、市内全校への設置を完了させるとともに、勝瀬中学校と水谷中学校における長寿命化改修工事に取り組み、児童生徒が安全で快適に通うことができる、教育環境を整備してまいります。


(2)地域福祉、高齢者福祉、障がい福祉
 次に、分野4から分野7のうち、地域福祉、高齢者福祉、及び障がい福祉について、ご説明いたします。
 複雑化・複合化した福祉課題に対応するため、行政や民間支援機関、地域住民との協働による包括的な支援体制を構築する、重層的支援体制の整備を継続し、支援が必要な方に対し、社会とのつながりを回復させる参加支援事業などに取り組んでまいります。
 フレイルサポーターによるフレイルチェックに加え、コンピューターゲームをスポーツ競技として捉える、eスポーツを新たなメニューに加え、フレイル予防事業の強化に取り組んでまいります。
 医療や介護が必要な高齢者やその家族が、在宅医療・介護情報を一元的に収集できるよう、在宅医療と介護ハンドブックの電子化を図り、住み慣れた地域での暮らしの継続を支援してまいります。
 障がいのある方が、通所事業終了後から、家族が帰るまでに過ごす場を確保するため、日中一時支援事業における夕方支援の補助を拡充し、障がいのある方やその家族が、安心して地域で生活できる環境を充実させてまいります。
 手話言語の普及啓発と、障がいのある方による文化芸術活動を推進するため、市制施行50周年記念事業のレガシーである、手話狂言ワークショップを市内の小・中学校で実施することで、障がいのある方との交流と理解を促進させ、共生社会の実現を目指してまいります。また、市議会のインターネット配信に字幕サービスを導入し、障がいの有無に関わらず、誰もが情報を得ることのできる環境を整えてまいります。


(3)スポーツ、文化芸術・文化財、生涯学習、多文化共生・国際交流
 次に、分野8から分野15のうち、スポーツ、文化芸術・文化財、生涯学習、多文化共生・国際交流について、ご説明いたします。
 誰もが楽しく、様々なスポーツにいつでも親しめ、日常的にスポーツで健康づくりに取り組めるとともに、世代を超えた交流ができる、多目的屋外スポーツ施設の整備に向けた取組を進めてまいります。
 また、東京2020(にーぜろにーぜろ)オリンピック・パラリンピックの共生社会ホストタウンにおけるレガシーを活かし、ボッチャの市民交流大会や、子どもスポーツ大学、市内小・中学校での車いすハンドボール体験教室など、障がい者スポーツの体験、交流事業を通じ、障がい者スポーツの普及啓発を継続してまいります。
 個人所有・管理の市指定文化財である、大澤家住宅長屋門や穀蔵(こくぐら)の修繕を支援し、歴史資源、文化資源を後世に引き継いでまいります。国指定史跡「水子貝塚公園」につきましては、適切な状態で保存管理するため、遺構の調査を実施いたします。また、発掘する調査過程を公開するなど、観光資源や地域資源として魅力度の向上を図れるよう、再整備を進めてまいります。併せて、本年で開園30周年を迎えることから、縄文時代にちなんだ企画を行う記念イベントを開催し、新たな来園者の確保に向け取り組んでまいります。
 公共施設予約システムについて、キャッシュレス機能の追加など利用者の要望を踏まえ、多くの方に使いやすく、わかりやすいシステムに更新し、利便性の向上を図ってまいります。
 市内小・中学校の授業において、姉妹都市であるセルビア共和国シャバツ市の子どもたちと、オンライン交流を開始し、次世代における国際交流の更なる推進を図ってまいります。


(4)土地利用、道路、治水、下水道
 次に分野16から分野21のうち、土地利用、道路、治水及び下水道について、ご説明いたします。
 市の中心であるシティゾーンにおけるBゾーンにつきましては、これから富士見市へ進出してくる企業との連携が非常に重要であることから、地元への社会貢献や市内企業とのマッチングなど、進出企業へ積極的にアプローチしてまいります。また、引き続き埼玉県と連携し、いち早い進出企業の操業に向け、周辺道路の整備などを進めてまいります。
 水谷柳瀬川ゾーンにつきましては、埼玉県による調節池整備の進捗に合わせ、県をはじめ、地域の町会や学校、環境団体等と協議をしながら、市民が楽しめる柳瀬川の自然を活かした周辺整備と、その活用について検討してまいります。
 市民の円滑な移動と安全性を確保するため、路面構造調査や橋梁の長寿命化修繕計画の策定を行うことに加え、市境の橋梁につきましては、近隣市と連携しながら修繕工事に取り組んでまいります。生活道路につきましても、舗装整備や狭あい道路の改善に取り組み、引き続き、地域の生活環境の向上を図ってまいります。
 台風や集中豪雨などによる浸水被害を防ぐため、富士見江川につきましては、危険個所の把握をする点検業務や、損傷個所の修復を行ってまいります。また、別所雨水ポンプ場につきましては、更新計画の策定や耐水化工事などを行ってまいります。併せて、市内各所にある排水機場や樋管などについて、更新に向けた基本計画の策定や詳細設計の実施など、地域の状況に応じた浸水対策を計画的に進め、快適で安心な生活環境を整備してまいります。


(5)環境、公園・緑、住環境
 次に、分野22から分野24、環境、公園・緑及び住環境について、ご説明いたします。
 富士見市の森林環境譲与税を活用し、CO2削減に向け、他の自治体と協定を締結してまいります。協定先の所有している公有林の整備費用の一部を負担することで、整備で得られる二酸化炭素吸収量を富士見市の二酸化炭素排出量と相殺する、カーボンオフセットに取り組んでまいります。また、今般、大東ガス、東京ガスとゼロカーボンシティに向けた協定を締結し、再生可能エネルギーの推進や省エネルギー化に連携して取り組むなど、2050年までに、二酸化炭素排出量を実質ゼロとすることを目指した「富士見市ゼロカーボンシティ宣言」を実現してまいります。
 市内小・中学校等の公共施設における長寿命化改修工事に合わせ、温室効果ガス排出量の削減を目指し、再生可能エネルギーである太陽光発電設備の設置に向けた調査を行ってまいります。
 富士見市は、1人1日当たりのごみ排出量において、市民及び事業者の皆様のおかげにより、2年連続で埼玉県内63市町村の中で一番少ない自治体となっております。今後におきましても、更なるごみの減量化を進めていくために、市内3町会のご協力を得て、生ごみを分別収集し、バイオガス化施設にて再生可能エネルギーとして再利用するモデル事業を、官民連携事業としてゼロ予算にて取り組んでまいります。
 鶴馬にございます「(おお)御庵(ごあん)(もり)」は、古民家、緑地、湧水などがそろった、本市の魅力的な地域資源の一つでございます。民間活力の活用を目指したサウンディング調査や、自然の保全に向けた生物モニタリング調査などを実施し、この場所を自然とふれあい、人が集う空間とするため、利活用の検討を進めてまいります。また、本市には大御庵以外にも多くの湧水が存在しております。これらの貴重な地域資源を、自然と歴史の学びの場、そして、潤い・安らぎ・癒しを与える空間として活用できるよう取り組んでまいります。
 併せて、市民が身近に親しめる憩いの場として残る豊かな自然環境を後世に引き継ぐため、市民緑地「諏訪の森」の用地を取得するなど、計画的に緑地の保全を進めてまいります。
 鶴瀬駅西口土地区画整理事業につきましては、換地処分や町名地番変更を行い、事業の早期完了に向け進めてまいります。鶴瀬駅東口地区につきましては、駅前広場の大屋根の整備や、駅前に向かう道路の拡幅工事を行うなど、富士見市の玄関口として、ふさわしい良好な市街地を形成してまいります。


(6)商工、農業
 次に、分野25から分野27のうち、商工及び農業について、ご説明いたします。
 市内の消費拡大や、地域経済の活性化を図るため、国の重点支援地方交付金を活用し、プレミアム付き電子商品券事業を実施いたします。また、中小企業チャレンジ支援事業補助金につきましては、生産性の向上や経営革新による競争力の強化に取り組む事業者を支援するため、設備投資事業補助を追加し、市内産業の活性化を図ってまいります。
 また、次代を担う若者や女性、シニア等が創業しやすい環境を整えるだけでなく、新規事業の立ち上げや事業承継などを、経営の専門家からアドバイスを受けることができる経営・創業相談事業を継続し、相談者に寄り添った支援により、市内事業者を支えてまいります。
 担い手への農地の集積・集約化を図るため、埼玉型ほ場整備事業を進めている上南畑戸中堀地区において、農地の区画拡大や道水路の工事を実施し、事業の完了を目指してまいります。


(7)シティプロモーション
 次に分野28シティプロモーションについて、ご説明いたします。
 更なる市の認知度の向上を目指し、電車広告を継続することに加え、W30のPRパンフレットを池袋駅や川越駅、有楽町の交通会館内にあるふるさと回帰支援センターなど市外で配布し、交流人口や関係人口を創出してまいります。
 また、令和5年度より取り組んでおります、チラシやポスターにおけるデザイン構成の統一化につきましては、専門家による市職員への研修により、これまでにはない訴求効果の高いものを作ることができました。この成功をさらに広めていくために、職員一人ひとりが市のセールスマンとなることができるよう、シティプロモーション研修を継続してまいります。


(8)危機管理、総合行政
 最後に、分野29危機管理及び分野30総合行政について、ご説明いたします。
 庁舎の災害対策本部機能の補完や、備蓄品の集中管理、支援物資集積場所、ボランティアセンターの機能を有する中央防災センターの整備に着手し、災害対応体制の強化を図ってまいります。
 「誰一人取り残さない」を理念に、すべての人に配慮するインクルーシブ防災の取り組みとして、福祉避難所開設訓練を実施し、防災力の向上に取り組んでまいります。
 建物・設備の老朽化や狭あい化、防災拠点としての機能・防災性能の不足など、多くの課題がある庁舎につきましては、「誰もが利用しやすく開かれた庁舎」や、「安全で安心な庁舎」、「環境にやさしく経済的な庁舎」など、5つの方針のもとに策定する新庁舎建設基本計画に基づき、基本設計などを進めてまいります。
 住民基本台帳や住民税などの基幹系情報システムにつきましては、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」に基づき、標準準拠システムへの移行を進め、市民サービスの向上を図ってまいります。
 ICTの活用推進につきましては、ペーパーレス化を推進するソフトウエアの導入や、出先機関へのタブレット端末の設置など、行政事務の効率化を図ってまいります。
 インターネットから市税等について、口座振替の手続きができる、Web口座振替受付サービスの導入や、粗大ごみの受付にチャットボットシステムを導入するなど、市民の利便性と行政手続の効率化を図り、本市のDXを進めてまいります。


4 令和6年度予算の概要

 令和6年度は、市のまちづくりの基本的な指針である第6次基本構想・第1期基本計画の仕上げに入っていく4年目となります。限られた財源を有効活用するとともに、さらなる成長に向けて歩みを進め、11万3千人の市民が「誰もが自分らしく、充実した日々を送ること」の実現に向けた予算を編成いたしました。
 予算の総額は、406億6,362万4千円で、前年度比16億2,469万円の増、率にして4.2%の増となり、過去最大の規模となっております。
 市税につきましては、納税義務者の増加などにより、総額164億7,291万円で、前年度比3億331万7千円の増、率にして1.9%の増となっております。
 地方交付税につきましては、地方財政計画等を踏まえ、前年度より6億3千万円の増となる41億3千万円を見込む一方、臨時財政対策債については、3億5千万円減の3億5千万円を計上いたしました。
 また、地方消費税交付金につきましては、地方財政計画や交付実績を踏まえ、前年度比1億円の増となる25億円を見込みました。
 市債につきましては、先ほどの臨時財政対策債の減と合わせ、水谷小学校校舎増築事業の完了などに伴い、前年度比9億3,620万円の減、率にして37.5%減の15億5,900万円となっております。
 なお、繰入金につきましては、財政調整基金などから18億6,972万5千円の繰り入れを行っております。

5 結びに

 『天災は忘れた頃にやって来る』
 ご存じですか、この言葉を。私はこの言葉を地震や台風の度に、また災害に関わらず不運な出来事に出会った時に、自分はしっかり取り組んできたのかと、自然と口に出てくる言葉です。
 この言葉を調べてみると、明治から昭和初期に活躍した、著名な物理学者の「寺田 寅彦」の言葉であることが分かりました。ここで、「寺田 寅彦」をご紹介したいと思います。
 明治11年東京生まれ、高知県で育ちます。東京帝国大学物理学科を卒業し、母校で物理学の教授にも就任しました。青年期は熊本第五高等学校に入学、ここで英語教師の夏目 漱石、物理学教師の田丸 卓郎と出会い、二人から影響を受け文学と科学を愛することとなります。後に漱石の代表作品である「吾輩は猫である」の水島 寒月や「三四郎」の野々宮 宗八という登場人物は教え子である寺田がモデルであると言われています。この交流が寺田を文学好きにさせ、彼の才能は随筆作品や俳句にも発揮されています。
 また寺田は、大正12年9月1日の関東大震災に上野で遭遇しています。これを随筆「震災日記より」に冷静な観察眼で、震災の状況を表現しています。大正14年には東京帝国大学地震研究所(後の東京大学地震研究所)に籍を置き、防災学者として地震・台風・火山などの被災地を調査・研究し、業績を残します。また、こうした研究から得た知見を活かし、随筆や講演を通して防災への啓発にも力を注ぎました。
 昭和9年の随筆「天災と国防」の中で、その年起きた災害を振り返ります。3月「函館大火」、7月「北陸地方手取(てどり)(がわ)大水害」、9月「室戸台風」、そして「その損害は容易に評価のできないほど甚大なものであるように見える。」とし、「悪い年廻りはむしろいつかは廻って来るのが自然の鉄則であると覚悟を定めて良い年廻りの間に十分の用意をしておかなければならないということは、実に明白すぎるほど明白なことであるが、またこれほど万人が綺麗に忘れがちなことも稀である。」と記しています。
 また、昭和8年「津浪と人間」では、明治29年6月に起こった「明治三陸地震津波」とほぼ同様な自然現象が、37年後に再び繰り返された「昭和三陸地震」を受けて、「こういう災害を防ぐには、人間の寿命を十倍か百倍に延ばすか、ただしは地震津浪の週期を十分の一か百分の一に縮めるかすればよい。そうすれば災害はもはや災害でなく五風十雨(ごふうじゅうう)亜類(あるい)となってしまうであろう。しかしそれが出来ない相談であるとすれば、残る唯一の方法は人間がもう少し過去の記録を忘れないように努力するより外はないであろう。」と綴っています。
 何十年に一度と言われる大災害に被災された人々は、時が移り世代が変わると、その経験の記憶は薄れ、継承されにくくなります。寺田の「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉には、「人間界の人間的自然現象」を言ったもので、災害に対する強い警告のメッセージが込められていたのです。
 さて、本施政方針の冒頭で触れた能登半島地震の発生は、地震による災害について改めて考えさせられる機会となりました。そして、政府地震調査研究推進本部は、南関東でマグニチュード7クラスの地震が今後30年以内に起きる確率は、70%という極めて高い値であると発表しています。
 こうした予測や知識、過去の教訓を活かして地震を正しく恐れ、正しく備えることが必要です。特に本市の課題である木造住宅密集市街地等における被害軽減のための必要な施策となる、住宅の耐震化、地震火災予防は大変重要です。耐震性の低い建物の倒壊や火災の発生と延焼による家屋被害により、人的被害が拡大することは容易に想像されます。能登半島地震でもこの現象は顕著でした。輪島朝市付近で火災が発生し、近隣に燃え広がり約300棟が焼失しました。阪神淡路大震災では、木造家屋の倒壊が火災の延焼を助長したとも指摘されています。
 私はこの富士見市を“地震に強いまち”特に“燃えないまちづくり”を推進すべきと考えます。「耐震化で安心の住まい」「火災予防と延焼防止」「地域づくりで防災力の向上」、これらを方針として位置づけ、今後本市の重要施策として、危機管理課を中心に関係部局にて連携して、市民の生命・財産を守るために取り組んでまいります。
 最後にもう一度、寺田 寅彦先生に登場していただきます。「少なくとも一国の為政の枢機に参与する人々だけは、この健忘症に対する診療を常々怠らないようにしてもらいたいと思う。」とユーモラスに釘を刺されています。私はこう答えたい、「了解です寺田先生。『震災は備えと覚悟!』だと。この随筆作品から勇気をいただきました。」
 新たな年に富士見市の未来を拓くため、全力で市政運営に取り組んでまいります。市民の皆様並びに市議会議員の皆様におかれましては、なお一層のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げまして、私の令和6年度施政方針といたします。

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政策企画課

〒354-8511 埼玉県富士見市大字鶴馬1800番地の1 市庁舎2階

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