第1章 計画策定にあたって 1 計画策定の背景と趣旨 近年、障がいのある人の高齢化と障がいの重度化が進む中で、障がい福祉のニーズはますます複雑多様化しており、すべての障がいのある人が、地域で安心して生活できるまちづくりが求められています。また、障害者基本法の理念にのっとり、障がいのある人もない人も相互に人格と個性を尊重し合い、ともに支えあいながら暮らすことができる地域共生社会の実現が求められています。 昨今では、支援が必要な場合であっても、個人や世帯単位で複数分野の課題を抱え、複合的な支援を必要とするといった状況もみられ、年齢を重ねても多様な生活課題を抱えても総合的な支援を受けやすくする必要性も生じてきています。 本市では、令和3年3月に策定した「第5期富士見市障がい者支援計画」の計画期間が令和5年度をもって終了することから、本市の障がい者施策を引き続き計画的に推進していくため、新たに令和6年度を初年度とした「第6期富士見市障がい者支援計画」を策定することとしました。 表 近年の障がい者施策の動向 令和元年 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」の施行 令和2年 「埼玉県ケアラー支援条例」の施行  「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律(聴覚障害者等電話利用円滑化法)」の施行 令和3年 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(改正バリアフリー法)」(改正)の全面施行  「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(医療的ケア児支援法)」の施行 令和4年 「障害者による情報の取得並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律(障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)」の施行  「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」に基づく第1回政府報告に関する国連障害者権利委員会の総括所見 令和5年 「埼玉県福祉のまちづくり条例」(改正)の施行 令和6年 「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」(改正)の施行(令和6年4月1日施行予定) 注釈:バリアフリーとは、障がいのある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)となるものを除去しようとすること。 2 計画の位置付け 「障がい者計画」は、本市の障がい者施策を総合的かつ計画的に推進するための基本計画であり、市民、関係機関・団体、事業者、市(行政)が、それぞれに自主的かつ積極的な活動を行うための指針となる計画で、障害者基本法第11条第3項に基づく「市町村障害者計画」として、位置づけています。 「障がい福祉計画」及び「障がい児福祉計画」は、国の基本指針に基づき、障がいのある人の地域生活を支援するためのサービス基盤整備等に係る令和8年度末における成果目標を設定するとともに、各種サービスの必要量を見込み、その提供体制を確保するための方策について定める、計画で、それぞれ障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第88条に基づく「市町村障害福祉計画」、児童福祉法第33条の20に基づく「市町村障害児福祉計画」として位置づけています。 「障がい者支援計画」は、障がい者計画、障がい福祉計画、障がい児福祉計画の3計画を一体として策定したものです。 また、策定にあたっては、埼玉県障害者支援計画並びに富士見市総合計画及び同実施計画における障がい者施策との整合性を図りました。 3 計画の対象 本計画では、身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がい、高次脳機能障がいを含む。)、難病等があるために日常生活又は社会生活の中で何らかの不自由な状態にある人を計画の対象とします。 4 計画の期間 本計画は、令和6年度から令和8年度までの3年間を計画期間とします。また、計画期間中においても必要に応じて内容の見直しを行うこととします。 5 計画の策定体制 策定にあたっては、障がい者福祉実態調査の結果を踏まえ、現在の事業の課題などや新たに生じた障害福祉サービスの需要などを市に設置された富士見市障害者施策推進協議会にて、総合的に検討し、施策の充実を図ります。 また、市の施策の実施状況などについては、庁内の関係各課から実施状況の評価、今後の課題や取組の方向性について検討し、実態に即した見直しを図ります。 さらに、計画策定の過程でパブリックコメントを実施し、広く市民の意見を反映して策定します。 注釈: 発達障がい: 発達障害者支援法上の定義では、脳機能の障がいであって、その症状が通常低年齢において発現するものと規定され、心理的発達障がい並びに行動情緒の障がいが対象とされている。具体的には、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障がい、注意欠陥多動性障がいなどがこれに含まれる。 高次脳機能障がい: 外傷性脳損傷、脳血管障がいなどにより脳に損傷を受け、その後遺症として生じた記憶障がい、注意障がい、社会的行動障がいなどの認知障がいのこと。 難病: 治療方法が確立されていない疾病その他の特殊の疾病。平成25年4月から障害者総合支援法に定める障がいのある人の対象に、難病等が加わり、障害福祉サービス、相談支援などの対象となった。 <参考>障がい者支援に関する近年の国の政策動向 (1)国の基本計画 @ 障害者基本計画(第5次)(令和5年閣議決定) <基本理念> 共生社会の実現に向け、障害者が、自らの決定に基づき社会のあらゆる活動に参加し、その能力を最大限発揮して自己実現できるよう支援するとともに、障害者の社会参加を制約する社会的障壁を除去する <基本原則> ○ 地域社会における共生等、差別の禁止、国際的協調 <社会情勢の変化> ○ 2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシー継承 ○ 新型コロナウイルス感染症拡大とその対応 ○ 持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現(SDGsの視点) <各分野に共通する横断的視点> ○ 条約の理念の尊重及び整合性の確保 ○ 共生社会の実現に資する取組の推進 ○ 当事者本位の総合的かつ分野横断的な支援 ○ 障害特性等に配慮したきめ細かい支援 ○ 障害のある女性、こども及び高齢者に配慮した取組の推進 ○ PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 (2)関係法の動向 @ 関連法の制定・改正 ア 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(令和元年) ・視覚障害者等の読書環境の整備推進に関し、国や自治体が果たすべき責務などを明記するとともに、視覚障害者等の図書館利用に係る体制整備等の視覚障害者等の読書環境の整備を総合的に進めるための施策が示された イ 「埼玉県ケアラー条例」が公布・施行(令和2年) ・ケアラーの支援に関し、基本理念を定め、県の責務並びに県民、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラーの支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラーの支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現する ウ 聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律(聴覚障害者等電話利用円滑化法)制定(令和2年) ・電話が即時に隔地者間の意思疎通を行う手段として重要な役割を担っていることに鑑み、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関し、国等の責務、総務大臣による基本方針の策定、電話リレーサービス提供機関の指定、電話リレーサービスの提供の業務に要する費用に充てるための交付金の交付等について定めることにより、聴覚障害者等の自立した日常生活及び社会生活の確保に寄与し、もって公共の福祉の増進に資する エ 「バリアフリー法」(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)改正法施行(令和3年) ・目的規定、国の基本方針、市町村が定める移動等円滑化促進方針(マスタープラン)に「心のバリアフリー」に関する事項を追加 ・市町村が定める基本構想に記載する事業メニューとして、心のバリアフリー関連事業である「教育啓発特定事業」を追加 オ 「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」施行(令和3年) ・医療技術の進歩に伴い医療的ケア児が増加するとともにその実態が多様化し、医療的ケア児及びその家族が個々の医療的ケア児の心身の状況などに応じた適切な支援を受けられるようにすることが重要な課題となっていることに鑑み、医療的ケア児及びその家族に対する支援に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体などの責務を明らかにするとともに、保育及び教育の拡充に係る施策その他必要な施策並びに医療的ケア児支援センターの指定などについて定めることにより、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資し、もって安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現に寄与する カ 「障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法」(障害者による情報の取得並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律)施行(令和4年) ・全ての障害者が、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加するためには、その必要とする情報を十分に取得し及び利用し並びに円滑に意思疎通を図ることができることが極めて重要であることに鑑み、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策に関し、基本理念を定め、及び国、地方公共団体などの責務を明らかにするとともに、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の基本となる事項を定めることなどにより、障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策を総合的に推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する キ 「埼玉県福祉のまちづくり条例」(改正)施行(令和5年) ・条例第8条第2項に「事業者の協力の下、車椅子使用者が円滑に利用することができる駐車施設のほか、高齢者、障害者などが円滑に利用することができる駐車施設の確保及び同項に規定する利用証の交付を受けた者によるこれらの駐車施設の優先的な利用の確保に努める」を規定 ク 「障害者差別解消法」(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律)施行(令和6年4月1日施行予定)(令和6年) ・事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化 (3)障害福祉計画等に係る基本指針の見直し 「基本指針」は、市町村及び都道府県が障害福祉計画及び障害児福祉計画を定めるにあたっての基本的な方針です。「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」が令和5年5月に改正されました。 @基本指針見直しの主な事項 1) 入所等から地域生活への移行、地域生活の継続の支援 ・重度障害者等への支援に係る記載の拡充 ・障害者総合支援法の改正による地域生活支援拠点等の整備の努力義務化等を踏まえた見直し 2) 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 ・精神保健福祉法の改正等を踏まえた更なる体制整備 ・医療計画との連動性を踏まえた目標値の設定 3) 福祉施設から一般就労への移行等 ・一般就労への移行及び定着に係る目標値の設定 ・一般就労中の就労系障害福祉サービスの一時利用に係る記載の追記 4) 障害児のサービス提供体制の計画的な構築 ・児童発達支援センターの機能強化と地域の体制整備 ・障害児入所施設からの移行調整の取組の推進 ・医療的ケア児等支援法の施行による医療的ケア児等に対する支援体制の充実 ・聴覚障害児への早期支援の推進の拡充 5) 発達障害者等支援の一層の充実 ・ペアレントトレーニング等プログラム実施者養成推進 ・発達障害者地域支援マネージャーによる困難事例に対する助言等の推進 6) 地域における相談支援体制の充実強化 ・基幹相談支援センターの設置等の推進 ・協議会の活性化に向けた成果目標の新設 7) 障害者等に対する虐待の防止 ・自治体による障害者虐待への組織的な対応の徹底 ・精神障害者に対する虐待の防止に係る記載の新設 8) 「地域共生社会」の実現に向けた取組 ・社会福祉法に基づく地域福祉計画等との連携や、市町村による包括的な支援体制の構築の推進に係る記載の新設 9) 障害福祉サービスの質の確保 ・都道府県による相談支援専門員等への意思決定支援ガイドライン等を活用した研修等の実施を活動指標に追加 10) 障害福祉人材の確保・定着 ・ICTの導入等による事務負担の軽減等に係る記載の新設 ・相談支援専門員及びサービス管理責任者等の研修修了者数等を活動指標に追加 11) よりきめ細かい地域ニーズを踏まえた障害(児)福祉計画の策定 ・障害福祉DBの活用等による計画策定の推進 ・市町村内のより細かな地域単位や重度障害者等のニーズ把握の推進 12) 障害者による情報の取得利用・意思疎通の推進 ・障害特性に配慮した意思疎通支援や支援者の養成等の促進に係る記載の新設 13) 障害者総合支援法に基づく難病患者への支援の明確化 ・障害福祉計画等の策定時における難病患者、難病相談支援センター等からの意見の尊重 ・支援ニーズの把握及び特性に配慮した支援体制の整備 14) その他:地方分権提案に対する対応 ・計画期間の柔軟化 ・サービスの見込量以外の活動指標の策定を任意化 A成果目標(計画期間が終了する令和8年度末の目標) 1) 施設入所者の地域生活への移行 ・地域移行者数:令和4年度末施設入所者数の6%以上 ・施設入所者数:令和4年度末の5%以上削減 2) 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 ・精神障害者の精神病床から退院後1年以内の地域における平均生活日数:325.3日以上 ・精神病床における1年以上入院患者数 ・精神病床における早期退院率:3か月後68.9%以上、6か月後84.5%以上、1年後91.0%以上 3) 地域生活支援の充実 ・各市町村において地域生活支援拠点等を整備するとともに、コーディネーターの配置などによる効果的な支援体制及び緊急時の連絡体制の構築を進め、また、年1回以上、支援の実績等を踏まえ運用状況の検証・検討を行うこと ・強度行動障害を有する者に関し、各市町村又は圏域において支援ニーズを把握し、支援体制の整備を進めること【新規】 4) 福祉施設から一般就労への移行等 ・一般就労への移行者数:令和3年度実績の1.28倍以上 ・就労移行支援事業利用終了者に占める一般就労へ移行した者の割合が5割以上の事業所:就労移行支援事業所の5割以上【新規】 ・各都道府県は地域の就労支援ネットワークの強化、関係機関の連携した支援体制を構築するため、協議会を活用して推進【新規】 ・就労定着支援事業の利用者数:令和3年度末実績の1.41倍以上 ・就労定着支援事業利用終了後一定期間の就労定着率が7割以上となる就労定着支援事業所の割合:2割5分以上 5) 障害児支援の提供体制の整備等 ・児童発達支援センターの設置:各市町村又は各圏域に1か所以上 ・全市町村において、障害児の地域社会への参加・包容(インクルージョン)の推進体制の構築 ・各都道府県は難聴児支援を総合的に推進するための計画を策定するとともに、各都道府県及び必要に応じて政令市は、難聴児支援の中核的機能を果たす体制を構築 ・重症心身障害児を支援する児童発達支援事業所等:各市町村又は圏域に1か所以上 ・各都道府県は医療的ケア児支援センターを設置【新規】 ・各都道府県及び各政令市において、障害児入所施設からの移行調整に係る協議の場を設置【新規】 6) 相談支援体制の充実・強化等 ・各市町村において、基幹相談支援センターを設置等 ・協議会における個別事例の検討を通じた地域サービス基盤の開発・改善等【新規】 7) 障害福祉サービス等の質を向上させるための取組に係る体制の構築 ・各都道府県及び各市町村において、サービスの質向上のための体制を構築 <富士見市手話言語条例> 富士見市手話言語条例が平成27年12月15日の富士見市議会において可決・成立しました。 本条例は「手話は言語である」という認識に基づき、 1、手話に対する理解を深め、広く普及する。 2、手話を使う市民が安心して日常生活を送ることができる環境を整える。 これらを進めることで、全ての市民が共に生きる地域社会の実現を目指しています。 本条例は市内に居住、在勤、在学する方、または市内で事業活動を行う個人、企業、団体などを対象としています。 手話は言語です 手話は、音声言語の日本語と異なる言語であり、耳が聞こえない人や聞こえづらい人が物事を考え、会話をするときに、手指や体の動き、表情を使って視覚的に表現する言語です。これまで手話は言語として認められてきませんでしたが、国際連合総会において採択された「障害者の権利に関する条約」や「障害者基本法」において「手話は言語である」と位置づけられました。 手話を学びたい方、興味のある方へ ・富士見手話サークル(問い合わせは「ぱれっと」まで 電話番号049−255−6610) ・手話奉仕員養成講習会 初心者の方を対象に講習会(全46回)を開催しています。 ・手話通訳者養成講習会 手話通訳者を目指している方を対象に開催しています。手話通訳1、2課程と実践課程を約2年間かけて学びます。 ・はじめての手話体験講座 初めて手話を学ぶ方、手話に興味のある方を対象に開催しています。