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世界一の砲丸職人として活躍した市民を紹介します

産業振興課 内線253

オリンピックのアトランタ大会(1996年)、シドニー大会(2000年)、アテネ大会(2004年)と3大会連続で男子砲丸投げの金・銀・銅メダルを独占した砲丸は、富士見市内の小さな町工場で作られました。

その技術は、マスコミ各社にも数多く取り上げられ、「魔法の砲丸」・「神の手」・「匠の技」と称賛されました。
製作者のお名前は、辻谷政久(つじたに まさひさ)さん(平成27年9月20日、急性心筋梗塞(こうそく)のため死去、82歳)。

辻谷さんと砲丸

辻谷さんの工場(有限会社 辻谷工業)で砲丸を作り始めたのは、1968年(昭和43年)頃で、40数年のキャリアがありました。

アテネモデルの砲丸

世界で唯一完全に真ん中に重心があると言われる
辻谷さんの砲丸(写真はアテネ五輪モデル)

辻谷氏と愛用の旋盤

辻谷さん愛用の旋盤

辻谷氏の砲丸とオリンピック
西暦 元号 大会名 内容
1964年 昭和39年 東京大会 ●陸上競技用具を手がけるきっかけ
東京オリンピック後、大手スポーツ用品メーカーからハードル製作
を依頼される。
1968年 昭和43年頃 ・・・・・ ●砲丸をつくりはじめる
同社から砲丸製作を依頼される。当時の国際規格、すなわち国際
陸上競技連盟(IAAF)の規則は直径110~130ミリメートル、重量
7.260キログラム(16ポンド)以上(一般男子用。以下同様)と大雑
把で、簡単にできる仕事だった。
1980年 昭和55年頃 ・・・・・ ●国際規格が変更
IAAF規則が「重量7.260キログラム+5~25グラム」と改訂された。
誤差20グラム以内という厳しさから国内に10社あったメーカーの
ほとんどが砲丸製作をやめたが、辻谷氏は「他人ができないとい
うなら、やってやろう」と新規格に挑戦する。
1988年 昭和63年 ソウル大会 ●オリンピックに初出品
大会前、認定を受けるための検定会場を見学した。検定員が「縦・
横・斜めどの向きでも転がらない砲丸は初めて」と驚いたというが、
大会ではどの選手にも選んでもらえなかった。
1992年 平成4年 バルセロナ大会 ●筋入りモデルで再挑戦
選手に選んでもらえるよう、表面に細かい筋を付けた砲丸を製作し、
IAAF認定も受けた。大会に提供した32個のうち練習用16個が紛失。
辻谷氏は「選手が気に入ってくれた証拠。次は本番で使ってくれる
だろう」と喜んだ。本大会では銀メダリストが辻谷氏が作った砲丸を
投げた。
1996年 平成8年 アトランタ大会 ●金・銀・銅メダリスト全員が辻谷氏が作った砲丸を投げる。
辻谷氏は「良い結果を出した競技者が選んだ砲丸と同じものを選ぶ
傾向があるので、あまりうれしくなかった。次の大会の結果を楽しみ
にした」。
1999年 平成11年 ・・・・・ ●世界陸上スペイン大会で1位~8位までの選手が辻谷氏の製作
した砲丸を使用する。
2000年 平成12年 シドニー大会 ●オリンピックで再び金・銀・銅メダルを独占
さらに1位~8位までの選手が辻谷氏の製作した砲丸を使用する。
辻谷氏を取材したNHKの番組で、初めてオリンピック会場で競技
を観戦した。金・銀・銅メダリストが選び投げる瞬間を自分の目で
見た。
2001年 平成13年 ・・・・・ ●国際規格が変更、筋入りは不可になる
2004年 平成16年 アテネ大会 ●筋なし砲丸でも、三たび金・銀・銅メダルを独占
筋入りではなくても、辻谷氏が作った砲丸は入賞者8人のうち7人
に選ばれ、やはり金・銀・銅メダルを独占した。
2005年 平成17年 ・・・・・ ●(有)辻谷工業として自社製砲丸を作りはじめ、2008年(平成20年)
5月1日にIAAF認定を受ける(認定期間は2012年5月31日まで)
2008年 平成20年 北京大会 ●砲丸を提供せず
2004年中国重慶で行われたサッカーアジアカップでの中国側サポー
ターの行動に疑問を感じ、北京オリンピック大会からの要望を断った。
2012年 平成24年 ロンドン大会 ●提供しないつもり
そろそろ引退を考えている。今後は国内と個人向けだけにする予定

難波田城資料館平成24年春季企画展展示図録『世界一の砲丸職人-辻谷政久氏のものづくり-』より転載

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砲丸製作

砲丸製作のようす

上記の表にあるように、国際陸上競技連盟の規格では、7.26キログラムの砲丸に対して、その誤差がプラス5~25グラム以内という厳しい基準があります。

辻谷さんは、長年愛用している汎用旋盤を使い、視覚(色)・聴覚(削っているときの音)・感触(手に伝わる感触)といった研ぎ澄まされた職人技で砲丸をつくりあげました。

砲丸づくりで一番気を遣うのは球の重心で、ひとつの砲丸が完成するまでに「削っては重心を測る」の作業を14回繰り返すそうです。

旋盤

旋盤とは、工作物を主軸に固定して回転させ、往復台上にある刃物を前後左右に動かし、工作物を軸対称状に切削する工作機械のことで、大きく分けて汎用旋盤とNC旋盤があります。

汎用旋盤
手動で工作物を削る従来型の旋盤
NC旋盤
数値制御 (Numerical Control) 装置を取り付け、刃物台の移動距離や送り速度を数値で指示できるようにした旋盤。現在では、コンピュータを用いての制御 が主流となっている。

世界のメーカーは、コンピュータ制御のNC旋盤で加工した後、重量やバランスを調整するために、球体に穴を掘ったり詰め物をしたりします。(実際に世界各国から取り寄せて割ってみたそうです)
また、調整後の砲丸にカラーリングを施して調整跡を隠しますが、それでも一流選手たちは持った瞬間に微妙なバランスの違いを感じるそうです。

職人の意地

1988年のソウル大会で、どの選手にも使用してもらえなかった悔しさが、辻谷さんの職人魂に火をつけました。
砲丸づくりを始めた当初は、NC旋盤を使用していましたが、何百回やっても重心がずれてしまったそうです。
「なぜ」、「どうして」の試行錯誤を繰り返すうちに、ふと技術以外に何か原因があるのでは?と思い、鋳物の成分にたどり着きます。

川口市内の鋳物工場に1年半通いつめ、数種類の成分比、温度、湿度によって重量や密度が変わってくる素材の性質を学びます。
鋳物は、溶解して固まる過程で密度が高い部分と低い部分ができ、全体が均等な重さのバランスにはならない。それを理解せず丸く削ることだけに執着していたのが失敗の原因だったと気付きます。

鋳物(いもの)の成分
鋳物には、シリコン・カーボン・マンガン・リン・硫黄の五つの成分が含まれていて、これに若干の不純物が混じる。溶解した原料を鋳型に入れて冷却する過程で、重い成分は沈殿し密度が高くなり、軽い成分は上部に集まる。よって鋳物の中で重い部分と軽い部分が生じてしまう。また、冷却により固まる時間が季節によって違うので、硬度も重心の位置も変化する。まさに生き物なんです。(辻谷さんより)

NC旋盤では、自動的に均等に削ってしまうため、どうしても重心がずれてしまう。(球の重心が1ミリずれると、飛距離が1~2メートル変わるそうです)
素材の重さのむらを、削るときの音の高低、表面のつや、手に感じる圧力を職人としての勘で判断しながら削ることで、重心を球の中心にもっていくことに成功します。
現在は、世界で唯一完全に真ん中に重心がある砲丸と言われ、世界の一流アスリートからの製作依頼が絶えません。

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日本の職人魂

辻谷政久さん

オリンピックですっかり有名になった辻谷さんには、当然のように世界のスポーツメーカーからオファーが届きます。

なかにはアメリカの大手メーカーから、技術指導の名目で億単位の契約話もあったそうですが、すべてお断りしたそうです。辻谷さんいわく『日本の職人が築き上げた物つくり技術が海外に流出することに危機感を抱いた』からだそうです。

辻谷さんの職人気質三箇条
  1. 夢と探究心をもつこと
  1. できないことにチャレンジする気概
  1. 妥協を許さず完璧を目指す徹底的なこだわり

受賞歴

  • 日本クリエイション大賞(ニッポンもの作り賞)
  • 厚生労働大臣賞(現代の名工)平成17年度
  • 経済産業大臣賞(元気なモノ作り中小企業300社)
  • 秋の褒章受章春秋褒章(黄綬褒章)平成20年

プロフィール

講演会での辻谷さん

辻谷政久(つじたに まさひさ)さん

  • 1933年(昭和8年)生まれ
  • 13歳のときに、父親が経営していた自動車部品の下請け工場(東京)で働き始める。見よう見まねで旋盤の操作を覚える。
  • 1959年(昭和34年)辻谷工業設立
  • 1968年(昭和43年)この頃から砲丸製作を始める(35歳)
  • 1974年(昭和49年)富士見市に転入(水谷東2丁目)
  • 2015年(平成27年)9月20日、急性心筋梗塞のため死去、82歳

難波田城資料館の企画展で講演する辻谷さん


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